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ゲームレビュー第三回 『くすぶり続ける灰』

 こんにちは、三道と申します。

 今回は本文が長くなってしまいましたので、ご挨拶も程ほどに、本日は以下のタイトルを扱います。

プレイステーションフロントミッションセカンド

 

 1995年、スクウェアより、『フロントミッション』というゲームが世に発表されました。

 西暦2090年の地球を舞台に、戦場を生きる兵士の生き様を描いたミリタリー・シュミレーションゲームです。搭乗型の二足歩行ロボットをモチーフとしながら、それを「戦車の延長線上にある陸上兵器」として描写することで、戦場のリアル感を演出した独特の作風は、軍事物ゲーム史の傑作といわれるシナリオの出来と相まって、多くのファンの獲得に成功しました。

 スクウェアは新作の好評を受け、シリーズ化に向けて動き始めます。

 

 そして1997年、『フロントミッションセカンド(以下 セカンド)』が発売されました。

 第一作から12年後の世界で、新たな戦場を舞台に、新しい主人公たちが苦難の道を歩むことになります。

 今作でも、戦争は数々の悲劇を生み出します。そこには祖国を思う純粋な正義と、巨大連合国家の大義と、その裏で暗躍する組織の思惑が有りました。

 

 主人公はアッシュという青年です。彼は「オシアナ共同連合軍(OCU軍)」に属する軍人です。彼はアロルデシュ(現実でいうバングラデシュ)という国に「派遣」されています。

 ここから少しややこしい話になりますが、「オシアナ共同連合(OCU)」とは、複数の国家によって構成される連合国家です(現実でいう国連の様な物です)。OCU軍とはその連合国家が持つ軍隊で、連合国家に所属する国々へ「派遣」されています。そして、OCUに参加する国も、その国独自の軍隊を持っている場合があります。アロルデシュも、アロルデシュ軍というものを持っていて、これはOCU軍とは完全に構造を異にしています。つまり、アロルデシュ国内には異なる2種類の軍隊が活動の拠点を持ち、共存していることになります。

 

 『セカンド』では主に、アロルデシュ軍の、OCU軍に対する、戦闘行為を伴ったクーデターが物語の中心になります。

 

 どういうことかまとめると

アロル軍「我々は連合国家(OCU)から独立して、一つの国家としてやり直すのだ」

         ↓一つの国家の立場を巡って対立↑

OCU軍「同盟国に派遣した軍隊が襲撃された。武装蜂起した現地軍の過激派を鎮圧だ」

という一種の内戦状態になります。

 

 アッシュ(主人公)はOCU軍の所属でアロルデシュに派遣されています。「彼の所属するOCU軍の基地」が、本来は友好関係にあるはずの「アロルデシュ軍の襲撃を受ける」事が、物語のスタートになります。

 

影の薄い主人公は何故生まれるのでしょうか。

 

 

 さて、ここからが今回のレビューの本題となります。

セカンド』では特に、「主人公の印象が薄い、地味だ」という感想をよく目にします。

 主人公が魅力的でない、という事は作品にとって大きなマイナスになってしまいます。彼のキャラクター性は実際どうなのでしょう。

 本当に、地味で中身のないキャラクターなのでしょうか。

 

 確かにアッシュ(主人公)は作中、ただ「戦場から逃げ遅れた仲間を置いていけない」「世界規模で危険な兵器を見つけたので破壊するまで頑張ろう」というような、「放ってはいけない」という行動原理だけで動いているように「見え」ます。それはおそらく、彼の口数が少ない事に起因しています。

 彼は行動主義者です。人と喋るのを得意とせず、主義主張は口に出すより、行動で示すタイプです。

 この作品のテーマである「祖国への思い」について彼が思いの丈をこぼすのはラストシーン、すべての戦闘行為が終わり、彼が行動を伴った主張が不可能になってようやく、その重い口を開くのでした。

「自分は祖国のために何が出来たのだろうか」と。

 クーデターを率いた敵の将校は、国家を純真に思い続うがゆえに行動を起こしました。その将校と立場上の成り行きで敵として相まみえた経験は、アッシュ(主人公)にとって大きな傷となっていました。

 無口な彼の内面では、「祖国に固執する執着心」や、「自身の無力感にやみくもに立ち向かう不器用さ」、また「一度決めたことは絶対に変えない不屈の精神」が、炎のように熱く燃えているのです。

 

 彼は、「口数は少ないが、仲間や故郷を大切にし、迷いを抱えていても折れない心で目標を達成する不屈の戦士」です。理想のリーダーと言えるのではないでしょうか。

 それを証明するように、仲間からの信頼は厚く、「せっかく危険地帯を抜けたのだから絶対に戦場に戻りたくない」と主張する女性兵士への説得が難航する中、アッシュ自身が説得を始めると比較的すんなり交渉は進展しました。また、彼に対し恋心を抱く人物も作中に存在します。

 

 アッシュ(主人公)は、ゲームプレイヤー達の評判とは裏腹に、意外と好人物です。イメージと実像の食い違い、その原因は何でしょうか。

 私は、その一端は、シナリオに有ると考えています。シナリオは主人公を写す鏡です。どんな苦境に晒され、どんな姿勢でそれと向き合ったかが、キャラクターの魅力の判断材料になります。ところが『セカンド』の場合、アッシュがどんな苦境に立たされているのかが、非常に分かりにくくなっているのです。

 『フロントミッションシリーズ』は、その濃厚な世界観が作品の特徴になっています。そして、世界観が濃厚であればあるほど、その理解には時間が掛かります。

 実際、今回の私のレビューでも、『セカンド』の内戦の構造を説明するだけで、少なくない前置きが必要になりました。

 作中には、OCUやアロルデシュにUSN、ヴァンツァー、フェンリルなど、多くの勢力名と専門用語が登場します。

 それらがどう絡み合っているのか、すべてを理解するには、ゲーム内に含まれている情報をフルに活用する必要があります。

 そのうえ、作品自体のテーマは「内戦」です。その問題に正しい答えは存在しません。

 あまりに難解なストーリーの構造は、そこに存在する苦境の輪郭を不透明にしてしまいます。そして、そこに「考察」の必要性が生まれます。

 さすがに、そこまでするゲームプレイヤーばかりではないので、必然的にアッシュ(主人公)の性格や内面について語る人が少なくなり、情報が出にくい。ゆえに、彼は印象が薄いという悪印象が付きまとうようになったのでは無いでしょうか

 

 しかし、彼は決して中身の無い人間ではありません。主義主張のない無気力人間とも違います。

 故郷の行く末に想いを馳せ、仲間を大切にする優しさと、苦しみを乗り越える強さを持った、静かに渦巻く炎の戦士なのです。

 

 

 余談になりますが、アッシュの仲間達のほとんどは「内戦」という事を強く意識しておらず、ストーリーの本筋(祖国への思いと対外政治)から隔離しています。ただし、それぞれに明確な思惑や目的を持って動いているので、彼らの魅力を考える上では、世界観や内戦の構造を理解していなくても問題がないのです。

 

 以下は、余談の上に作品のネタバレになります。ご注意ください。

  ↓ここから

 ちなみに、アッシュは非常に受動的な問題解決能力に優れています。いわば、自分からは行動を起こさないが、自分の身に降りかかる問題は解決できるという事です。

 彼の旧知であり、クーデター軍を率いて戦ったヴェンという人物は、アッシュとは対照的に情熱を言動に直結させるタイプです。国の未来を憂い、巨大な連合国家に戦いを挑んだ直情の男です。しかし、彼は問題の解決能力がいまいち足りていないようです。

 かつてこの二人の男達は、袂を分かちました。

 それでも、彼らが故郷を思う気持ちは同じです。もしも、ヴェンとアッシュがその理想を共有していたならば。ヴェンが道を示し、アッシュがその道を塞ぐ物を退けていたならば、クーデターの結末は違う物になったかもしれません。

  ↑ここまで

 

 最後になりましたが、以上の文章は、素人の人間が、個人的な感想を述べたものです。反対意見も多数有るかと存じますが、世の中にはこういう意見も有るんだな、というふうに見て頂けると幸いです。

 

 それでは、これにて第三回のゲームレビューを終了とさせて頂きたいと思います。

 今回は本当に長くなってしまいました。長々とお付き合い頂きまして、まことにありがとうございました。